Ondo Finance徹底解説──米国債トークン化の覇者が抱える「事業とトークンの乖離」という構造問題

Ondo Financeは、暗号資産投資家がRWA(リアルワールドアセット)という言葉を口にするとき、ほぼ必ず最初に名前が挙がるプロジェクトになった。2026年4月時点でプラットフォーム全体のTVLは約30億ドルに達し、トークン化米国債の分野では事実上の標準的なディストリビューターとして機能している。だが、Ondoを語るうえで投資家が最初に切り分けなければならないのは、「Ondoという事業」と「ONDOというトークン」がまったく異なる経済主体だという点である。この記事は、その乖離を軸にOndoの市場構造を解剖していく。

目次

Ondoがオンチェーン化しているのはTビルと米国株であって、信用ではない

まずOndoの立ち位置を競合との対比で固定しておく。RWAセクターは大きく二つに割れている。一方は国債や株式といった金融資産への請求権をトークン化する陣営、もう一方はローンや決済債権といった「現実の経済活動から生まれるキャッシュフロー」をトークン化する陣営だ。Ondoは完全に前者に属する。

これは利回りの源泉が何かという問いに直結する。Ondoの主力商品OUSGとUSDYの利回りは、規制された短期米国債のクーポンからほぼ機械的に生成される。DeFiネイティブなトークンエミッションではない。OUSGは2026年1月時点で約3.49%のAPYを提示していたが、この数字はFRBの政策金利に連動して動く。対照的に、信用をトークン化するMaple Financeは2026年5月時点で9〜14%の機関向けローン金利を提示し、PayFi特化のHuma Financeは約10.5%のリターンを出している。

つまりOndoの低い利回りは欠点ではなく、リスク階層上の立ち位置を表している。トークン化Tビルは「何が壊れうるか」が最も限定された資産で、発行体の信用リスクを米政府信用にまで切り下げている。投資家がOndoを選ぶ理由は高利回りではなく、ドル建ての「オンチェーンの無リスク金利」を担保として再利用できる資本効率にある。

USDYとOUSGは「同じ国債商品」ではない──法的構造が回収順位を変える

Ondoの国債商品を一括りにする投資家は多いが、両者は破綻時の権利の性質がまったく異なる。ここを混同すると、ストレスシナリオでの回収見込みを読み違える。

OUSGはデラウェアのリミテッドパートナーシップで、投資家はOndo Capital Management LLCが運用するLPの有限責任組合員になる。Section 3(c)(7)の私募ファンド構造を取り、Reg DのRule 506(c)で募集される。原資産はBlackRockのBUIDLファンドを経由して短期米国債を保有する。つまりOUSGの保有者はファンドの持分権者だ。

一方USDYは破産隔離されたSPVが米国債と銀行預金を保有し、トークン保有者はそのSPVに対する有担保債権者(secured creditor)の地位を持つ。持分権者と債権者では、発行体が破綻した際の弁済順位も回収プロセスも違う。日次のNAVアテステーションはAnkura Trustが担い、Chainlinkオラクル経由でオンチェーンに検証データがプッシュされる。

この設計の分離は投資家層の分離と対応している。OUSGは米国の適格購入者(個人で最低500万ドルの投資資産が必要)に限定され、USDYはReg Sを使って非米国居住者に開放されている。BlackRockのBUIDLが500万ドルの最低投資額と適格購入者要件で個人を締め出しているのに対し、OndoはOUSGで機関の入り口を維持しつつ、USDYで5,000ドルからのアクセスを開いた。この二段構えがOndoの流通戦略の核にある。

OUSGのBUIDL依存は、Ondo最大の単一障害点である

OUSGがBUIDLへのパススルー構造を取っていることは、Ondoの強みであると同時に最大の構造的弱点でもある。

OndoはBUIDLの単一最大保有者だ。これによりOndoは自らを「機関のプラミングと個人のアクセスをつなぐ中間レイヤー」に位置づけている。BUIDLが上流の機関インフラ、Ondoが下流のディストリビューションという役割分担で、OUSG投資家はBlackRockが運用する原資産の利回りに、より低い障壁でアクセスできる。

だがこの構造は、BlackRock・Securitize・BNY Mellonのいずれかで重大な運用障害が起きれば、OUSGの償還に連鎖することを意味する。Ondoのスマートコントラクトとチームは独立していても、原資産レッグは独立していない。OndoはBUIDL利用不可時に国債ETFのバスケットへ移行できるとしているが、その移行は即時ではないと公表している。投資家がOUSGを評価する際、見るべきはOndo単体の健全性ではなく、BlackRockのオペレーション全体の連鎖リスクだ。なお、ほとんどのトークン化国債商品にSIPC(証券投資者保護)は適用されない点も、TradFiの口座構造との決定的な違いとして押さえておく必要がある。

Ondoが米国債RWAで先行できた理由は、証券業務ライセンスの内製化にある

多くのRWAプロジェクトが外部のライセンス保有者に依存するなか、Ondoは証券業務の中核機能を自社に取り込んだ。これが規制対応における競合との最大の差になっている。

2025年7月のOasis Pro Markets買収により、OndoはSEC登録のブローカーディーラー、ATS(代替取引システム)、トランスファーエージェントのライセンスを自社保有することになった。トークン化証券を「証券法を出発点に組む」設計を取るうえで、これらのライセンスを内製していることは、コンプライアンス部門が機関資金を動かす際の説明責任の連鎖を担保する。

規制面の追い風も2025年後半から重なった。SECは2023年10月から続けていたOndoへの調査を、2025年11月に訴追勧告なしで終結させた。さらにOndoはBlackRock、Goldman Sachs、JPMorgan、Franklin Templeton、Morgan Stanley、Circle、NYSE、NasdaqらとともにDTCCのトークン化ワーキンググループに名を連ね、2025年12月にはSEC議長Paul Atkins宛に「トークン化証券のロードマップ」を正式提出している。MiCA承認も2025年11月にリトアニア経由で取得し、EU市場への対応を固めた。管轄ごとに見ると、OUSGは1940年投資会社法のQualified Purchaser向け、USDYは1933年証券法Reg Sで非米国人向けと、商品ごとに適用法を分けている。

Ondo Chainの許可制バリデータは、機関の参入障壁を逆手に取った設計

Ondoは商品発行体にとどまらず、2025年にRWA特化のレイヤー1であるOndo Chainを立ち上げた。この設計思想を読むと、Ondoが誰を顧客と見ているかがわかる。

Ondo Chainは四つの柱で構成される。許可制バリデータ、RWA担保ステーキング、エンシュリンドオラクル、ネイティブomnichainブリッジだ。なかでも許可制バリデータは、規制された金融機関だけがバリデータノードを運営する設計になっている。多くの機関は、匿名の参加者がトランザクションを検証する完全パブリックなチェーンと相互作用することを規制上制限されている。Ondo Chainは「既知の金融機関が検証する」ことで、コンプライアンス部門が求める説明責任の連鎖を提供する。

同時に、バリデータは許可制でも、トークン発行・アプリ開発・利用は誰でも可能というハイブリッド構造を維持している。フロントランニング防止という金融取引特有の要請にも、この許可制が応えている。2025年5月にはJPMorgan、Chainlinkとの間でDvP(Delivery-versus-Payment)テストを実施し、設計アドバイザーにはFranklin TempletonやGoogle Cloudが名を連ねた。投資家にとっての論点は、このチェーンがガス代やバリデータステーキングを通じてONDOにオーガニックな需要を生み出せるかどうかだが、それは機関採用がどれだけのスピードで進むかに依存しており、現時点では未確定だ。

なぜOndoは儲かりにくいのか──CircleやTetherとの収益構造の決定的な差

ここからがOndoを投資対象として見るうえで最も見落とされがちな論点だ。Ondoは事業として、構造的に薄いマージンしか取れない設計になっている。

Ondoの収益源は主にOUSGとUSDYへの管理手数料で、料率は0.15%だ(OUSGについてはドキュメント上、2026年7月1日まで免除されている)。発行・償還手数料が約0.20%、Global Marketsではトークン化株の建値と原資産価格のスプレッド収入が加わる。問題は、Ondoが利回りのほぼすべてを保有者に分配し、自らはわずかなスプレッドしか残さない点にある。

この構造をCircleと比べると差が際立つ。Circleは2025年Q2に約610億ドルの運用資産から年率約4.1%の準備金利回りを得て、四半期で6.34億ドルの準備金収入を計上した。IPOや株式報酬の影響を調整したEBITDAマージンは約50%に達する。USDCやUSDTを無利息で保有させ、フロート金利を発行体が総取りするモデルだからだ。対してOndoは利回りを保有者に渡すyieldcoin型であり、AUMベースの利益率は本質的に限定される。

その結果、Ondoは収益性よりもエコシステム拡大、すなわちAUMの拡大を戦略の中心に据えていることを明示している。手元に潤沢な余剰キャッシュフローがあるわけではない。将来の収益レバーとして、トークン化技術のホワイトラベルライセンス収入や、Ondo Perpsのような取引手数料を伴うプロダクトへの移行が想定されている。Ondoの事業は伸びているが、その伸びがそのまま利益率に直結する構造ではないことを、投資家は織り込む必要がある。

ONDOトークンはガバナンス権であって、収益請求権ではない

事業の薄いマージンという話は、ONDOトークンの評価に直接跳ね返ってくる。ここがOndoという投資テーマの核心だ。

ONDOはガバナンストークンであり、プロトコル収益から直接のキャッシュフローを受け取らない。総供給は100億トークンで固定され、2026年6月時点で約48.7%が流通している。配分はエコシステムグロースが52.11%、プロトコルディベロップメントが33.00%、私募が12.90%、コミュニティアクセスセールが1.99%という構成だ。

供給面の圧力も無視できない。2026年1月には約19.4億トークンのアンロックが実行され、次の大型クリフアンロックは2027年1月18日に控えている。ヴェスティングスケジュールは2029年まで延びており、今後3年で流通供給が実質的に倍増する見込みだ。クリフ方式のアンロックは、設定された待機期間後に一括で放出されるため、遅延しつつも大きな供給イベントを生む。

強気論者は、規制が明確になればDAOが「フィースイッチ」を提案し、プロトコル収益の一部をトークン保有者に還流させる、あるいはOndo Chainのガス・ステーキング需要がオーガニックなユーティリティを生むと見ている。一方で懐疑論者は、米証券法への厳格な準拠こそが、規制介入を招かずに直接的なバリューキャプチャー機構を実装することを恒久的に妨げる、と指摘する。この構造的な曖昧さがどう決着するかが、ONDOの長期的な経済的存続を左右する。事業が成長してもトークンがその価値を捕捉しないという乖離は、Ondoを買う投資家が最初に向き合うべき問いだ。

USDYはステーブルコインではない──リスク階層上の正しい位置

ドル建てのオンチェーン資産として、USDYはしばしばステーブルコインと混同される。だが両者はリスクの種類が異なり、混同は資産配分の誤りを生む。

プレーンなUSDCやUSDTは保有者に利回りを渡さず、発行体がフロート金利を取る。USDYは米国債の利息が日々蓄積し、トークン価格自体が上昇していくyieldcoinだ。リスク階層で整理すると、トークン化Tビル(BUIDL、USDY、OUSG、USTB)が4〜5%で最下層、Sky sUSDSやAaveが3〜12%、PendleやEthenaが10〜18%という序列になる。同じドル建てのリターンでも、トークン化Tビルが発行体の信用リスクを米政府信用に切り下げて隔離しているのに対し、上位層はスマートコントラクトリスクやレバレッジを積み増している。

GENIUS Act(2025年7月18日成立、Public Law 119-27)が利回り付きステーブルコインを制限し、ステーブルコインを決済インフラとして位置づけたことで、利回り生成は資産レイヤーへと押し戻された。これがUSDYのような利回り付きRWAと、純粋な決済用ステーブルコインの境界を法的に固定している。過去のデペッグ事例──2022年のUST崩壊や2023年のUSDCのSVB事件──と対比すると、USDYの準拠型SPV構造はリスクの所在が明確だが、ペッグ防衛の仕組みを持つステーブルコインとは異なり、原資産への請求権の質そのもので評価されるべき資産だということがわかる。

トークン化株とパーペチュアルへの拡張は、Ondoを国債発行体から押し出している

Ondoの2025年から2026年にかけての動きを追うと、国債発行体という当初の枠を明確に超えようとしているのがわかる。

Ondo Global Marketsは2025年9月のローンチ以降、260以上のトークン化米国株・ETF(Tesla、NVIDIA、Apple、QQQ、金ETFのIAU等)を扱い、2026年5月にはTVL10億ドルを突破した。トークン化株プラットフォームとして初の到達で、累計取引高は180億ドルを超えた。各トークンは米国登録ブローカーディーラーが保有する原証券で1:1バックされ、配当を含むトータルリターンを追跡する。MetaMask、Binance、Bitget等のウォレット・取引所経由でアクセスでき、2026年4月にはBroadridge連携で250以上のトークン化株に議決権・開示書類へのアクセス機能を追加した。これは経済的エクスポージャーしか持たなかったトークン保有者に、ブローカー口座相当のガバナンス機能を一部開いたものだ。

さらに2026年6月9日には、非米国ユーザー向けにトークン化株の最大20倍レバレッジ取引を可能にするOndo Perpsをローンチした。Tesla、NVIDIAといったトークン化株を証拠金にできる設計で、6月14日にはベータ版が公開されている。トークン化株は国債と違い、コーポレートアクションや議決権、法的所有の複雑さを伴う。トークンが領収書なのか、登録された株式なのか、合成エクスポージャーなのかという法的論点が国債より係争的なため、この拡張はOndoに新たな収益源をもたらす一方、規制上の不確実性も引き込んでいる。

投資家が事業とトークンを切り分けて見るべき指標

Ondoを評価する際、プロトコルの健全性指標とONDOトークン固有の指標は分けて追うべきだ。両者は連動するとは限らないからだ。

プロトコル側で見るべきは、TVLが価格上昇ではなく純流入由来かどうか、裏付け資産残高とNAVアテステーションの頻度・監査人、ストレス時の償還実績、保有者数と保有集中度、そして二次流通量だ。とくに保有集中度は流動性の実態を映す。RWAセクター全体では2026年時点で発行残高が約31〜36億ドルに達しているが、これは「issuance」であって「float」ではない。最大級の商品でも保有者数は限定的で、二次流通市場は薄い。最大の移転は1取引あたり1,000万ドル近辺にクラスターしており、これは機関のバッチ処理であって個人の取引深度ではない。Ondoの中ではUSDYが8チェーン展開で累計15億ドル超のDEX取引高を生み、相対的に流動性が高い一方、パーミッション付きのOUSGは構造的に二次流通が制限される。

ONDOトークン側では、アンロックスケジュール、バリューキャプチャー機構の有無、取引所への純流入・流出、FDVと時価総額のギャップを追う。なおOUSGは米国税務上パートナーシップとして扱われ、保有者にはSchedule K-1が発行される。これはトークンを保有するだけのステーブルコインとは異なる申告上の負担で、米国の投資家にとっては実務的に無視できない違いだ。

Ondoは、機関のトークン化インフラと個人のアクセスをつなぐ中間レイヤーとして、RWAセクターで最も発達したケーススタディであり続けている。その事業基盤の強さと、ONDOトークンがその価値をまだ捕捉できていないという構造のあいだに、このプロジェクトを巡る投資判断のすべてが詰まっている。

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この記事を書いた人

海外のクリプト市場と制度設計の変化を観測し、価格ではなく信用構造と国家パワーの変数から長期トレンドを分析している。短期ニュースや投機的視点には依存せず、通貨構造の変化を軸に情報を整理している。空の崖から長期構造を観測する視点でスカイクリフドゥエラーを運営。

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